深夜上映のMidnight Madness部門で観客を魅了
荒涼とした地下世界とそこに生息する多くの不思議な生命体たち。人間とマリガンによって繰り広げられる時空を超えた壮大なドラマと随所にちりばめられたユーモア。そして特筆すべきが究極の手仕事ともいえる登場キャラクターたちが生きるその世界。9月14日まで開催されていたトロント国際映画祭(TIFF)のミッドナイトマッドネス部門で上映された堀貴秀監督の「JUNK WORLD」は、多くの観客をJUNKワールドの虜にした。

Courtesy of TIFF
堀監督が7年もの歳月をかけて作り上げたSFストップモーション・アニメの前作「JUNK HEAD」(2021年)は、ファンタジア国際映画祭最優秀長編アニメーション賞をはじめ数々の賞を受賞、ギレルモ・デル・トロ監督からも絶賛されるなど世界中の映画ファンを魅了した。
シリーズ第2作となる「JUNK WORLD」は、前作の1042年前の世界が舞台。地下世界での異変を調査するために派遣された、人間と人工生命体「マリガン」の共同チームの冒険を描くストーリー。時空を超える壮大なストーリー展開と、不思議で愛嬌のあるキャラクターたちが織りなす世界感が観るものを引きつける。
今回の映画祭での上映にあたって、トロント入りしていた堀貴秀監督に、作品への思いなどを伺った。
編集部―今回トロント国際映画祭では真夜中(午後11時59分開始)の上映部門にもかかわらず大変盛り上がりました。上映を終えて感想はいかがですか?
堀貴秀監督(以下、堀監督)―あんなに笑いが起こったのはびっくりしました。狙ったところで笑ってくれていたし、前作を観てくれていた人も多かった感じだったし、本当に嬉しかったです。
―今回の作品は前作よりも前の世界が舞台です。時系列的にそのような設定にされた意図を教えていただけますか?
堀監督―3部作にするとか、時空を超えるというアイデアはもともとあったのですが、実は「JUNK HEAD」の完成後、上映がなかなか決まらない時期があったんです。前作が上映されていないまま続編を作るわけにもいかないので、「JUNK WORLD」は単独で観てもわかるように前日譚としました。
―作品では登場キャラクターが時空を超え、マルチバースで姿を変えながら活躍します。複雑に展開するストーリーは、観ていて伏線が回収されていく楽しさがすごくありました。
堀監督-映画はストーリーが99パーセント重要なのでそこは妥協しないでやりました。なるべく観る人に伝わるように、一回出来上がってもここはこのタイミングでは伝わらないな、とかパズルのようなもので何度も調整しました。
―前作では制作に7年もかかり、今回は3年だったと伺いました。
掘監督-最初は何の知識もなく勉強しながら作っていたので、全部新しい体験で覚えることも楽しくて、やっているうちにいつの間にか7年かかったという感じでした。
また、前作では粘土をこねて人形を作り撮影していたのが、今回は3Dプリンターを使ったので同じ人形を何体も作ることができて、撮影のスピードがあがりました。3Dプリンターも、それを覚えるところから始め勉強しながら作ったのは同じですが。
ただ、ある程度工程がわかったので、次の作品からはようやくこだわった物が作れる気がしています。
―映画終了後にはメイキング映像も流れて、気が遠くなるような手作業で作られた作品だと改めて感じました。
堀監督―CG とかAI の発達で手を使って物を作る作業というのが減っていきているので、手作業の部分も見せるというのも作品の一部かな、と思っています。特にお金がかかるSF を手作業で表現出来たら、もうこれは新しいジャンルにならないかな、と思って。
―ストップモーションで作ろうというのも最初からのアイデアだったのでしょうか
堀監督-芸術家目指して絵描きになろうと彫刻やったり漫画家を目指したり、そういうのをずっとやってきて40歳くらいで映画を作ろうとなった時、そういう技術が全部集まってコマ撮りになったんです。自分自身も手先なら使える、と思っているのでそこからスタートしました。
―ストーリーが楽しいのももちろんですが、作品には個性豊かなキャラクター以外にも体の細部までデザインされた生物たちなどが多く登場します。それらは監督がデザインされたのでしょうか。
堀監督―キャラ付けや性格とか、基本になるイメージデザインは自分で描きました。自分の頭の中に、目をつぶればその世界にいるみたいなすごくリアルな世界が出来上がっているので、それを出来るだけ再現しようとしました。本当は(頭の中では)もっとすごい世界なんですけど(笑)、予算も人も足りない中でいかに再現できるかと考えながら作っていました。
―本当に一瞬しか出てこない生物でも個性豊かに細かいところまで描かれていて驚きました。
堀監督-虫のようなキャラクターでも個性を持っているように表現したいな、と。デザインを考えてどのシーンでどのように動かすかとか考えているだけで、描きながら感情を持っているように見えてくることもありますね。
―作っているプロセスをお聞きしていると、とても楽しそうです
堀監督-絵コンテを作るまでは、ハリウッドレベルの映像が自分の頭の中に流れているので楽しいですね。いざ作るとなると現実に落とされて(笑)。自分にとって創作は妥協するっていう感覚がついてしまって、楽しいというより辛いところもあります。できるだけ近づけるように頑張ってはいますが、たまに疲れちゃうところもあります。
―第3作目について何か教えていただけますか?
堀監督―3作目の「JUNK END」は4年後くらいには出せる予定ですが、まだストーリーを練り直しているところです。時系列的には「JUNK HEAD」の後になる予定で、1作目と2作目のキャラクターが時空を超えて出会うという設定になります。
完成するまでの過程も作品の一部として応援していただいてるので、途中経過もXで発信するなどして楽しんでもらえる作品にしていきたいと思っています。

堀貴秀監督 Photo: Osanpo News Canada!
堀監督ー「JUNK WORLD」は細かいところまでネタを大量に仕込んであるので、何度も観て楽しんでもらえれば
短いトロント滞在中にはナイアガラの滝を見に行き楽しまれたという堀監督。次回作も楽しみにお待ちします!




