観たよ!『Nirvanna the Band the Show the Movie』TIFFレビュー トロントを舞台に繰り広げる最高のコメディ

『Nirvanna the Band the Show the Movie』映画レビュー トロントを舞台に繰り広げる最高のコメディ

Nirvanna the Band the Show the Movie/ Courtesy of TIFF

 2026年トロント国際映画祭(TIFF)のミッドナイト・マッドネス部門オープニング作品は、トロントを舞台に二人の男たちが繰り広げる、笑いと、驚きと、アホらしさと、友情がたくさん詰まった素敵な映画でした。

 マット・ジョンソン監督・主演の『Nirvanna the Band the Show the Movie』は、カナダ発のカルト的人気を誇るVicelandシリーズを映画化した作品で、ドキュメンタリー風の演出、ゲリラ撮影、タイムトラベルを組み合わせた、シュールで型破りなコメディです。映画祭で上映されるやいなや、トロントを中心に地元カナダ民から、2026年を代表するコメディの一本として熱狂的な支持を集めている今年大注目の一本です。

 あらすじ: 売れないミュージシャンのマットとジェイは、トロントのライブハウス「The Rivoli」で演奏するという長年の夢をかなえようと、ある無茶な計画を実行します。しかし、その作戦が大失敗した末、思いがけず2008年へタイムスリップ! 過去をやり直して夢を実現しようと奮闘するものの、次々と予想外の騒動に巻き込まれていきます。

 予告編だけを見ると、素人同然のバンドマン二人が騒動を巻き起こすだけの、ゆるいモキュメンタリーのように映ります。しかし、驚かされるのは、その雑さ?インディーっぽさ?が実は極めて緻密に設計された演出だったという点です。

 CNタワーやQueen St.など、見覚えのある場所でのゲリラ撮影、即興芝居、実写とVFXを組み合わせた大胆な映像、そして『バック・トゥ・ザ・フューチャー』へのオマージュを軸にしたタイムトラベル映画としての完成度。DIY精神に満ちた作品でありながら、どうやって撮ったのか分からない大胆な映画作りがすごく上手く収まって、何とも言えない学生映画のような楽しさを創り出すのに成功しています。

 そして、この作品の一番の魅力は「笑える」だけでは終わらない作品だということ。

 主人公のマットとジェイは、何年経っても成功しないバンドマンで、ひたすら無謀な計画を立てては失敗を繰り返します。その姿は一見するとアホらしさの連続ですが、物語が進むにつれ、夢を諦めきれない二人の関係や、長年積み重ねてきた友情が少しずつ浮かび上がってきて、そこがなんともチャーミングなのです。

 本作は2007年からカナダで続くウェブシリーズ、さらにテレビシリーズを経た長寿人気コンテンツの映画化です。しかし、全くの予備知識無しにこの映画だけ観ても問題なく楽しめ、初めて観る人も新たなファンへ変えてしまう作品に仕上がっています。もちろん、シリーズを知っていれば細かなセルフパロディや伏線をより深く楽しめるでしょうし、舞台となるトロントの土地勘があれば、面白さが増すことは事実だと思いますが、上映された際にはその辺を知らない人も皆楽しんでいました!

 マット・ジョンソン監督は『BlackBerry』で注目を集めた監督です。本作では前作と少し違って、商業映画的な洗練よりも学生映画のような自由さを前面に押し出しています。その自由さこそが、この作品を映画作りそのものへの愛に満ちた作品にしていると言えるでしょう。『Nirvanna the Band the Show the Movie』は、単なる爆笑コメディではなく、映画という表現への途方もない遊び心と愛に満ちた作品でした。

 日本での公開及が待たれる作品です。

Nirvanna the Band the Show the Movie マット・ジョンソン監督/ Courtesy of TIFF

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