バンクーバー国際映画祭(VIFF)で「粒子のダンス」上映 岡博大監督インタビュー

バンクーバー国際映画祭で「粒子のダンス」上映岡博大監督インタビュー

「粒子のダンス(particle dance)」岡博大監督 Courtesy of VIFF

 映画「粒子のダンス(英語題particle dance」が10月8日と9日、バンクーバー国際映画祭(VIFF)で上映された。映画祭開催中には、岡博大監督も来加し、取材に応じた。

 「始めた時は、まさか15年かかるとは思っていませんでした」とその制作過程を振り返る岡監督。撮影を開始したのは2010年。当初は3〜4年での完成を見込んでいたが、翌2011年に東日本大震災が発生し、隈研吾氏が復興の街づくりに関わることになった。「復興のための建築が完成するまでは腰を据えて撮らなければ」と、その時点で長期的な撮影を覚悟したこと明かす。

 その後、隈氏が東京オリンピックの新国立競技場の設計を手がけることが決まり、コロナ禍を経て東京オリンピックの終了後には、東北・南三陸のプロジェクトが竣工。さらに大阪・関西万博のパビリオン計画も記録に加えた。結果として、2025年8月に行われた完成披露試写会の直前まで撮影は続いた。

 「隈先生からは、『ガウディの建築みたいに完成しないんじゃないか』と冗談を言われたこともありました」と笑顔で振り返り、「時間はかかりましたが、今が完成に最も良い時期だったのだと思います」と穏やかに語った。

「粒子のダンス(particle dance)」岡博大監督 Courtesy of VIFF

 隈氏が訪れる先々の風景や人々、建物がリズミカルに映し出される映像には、土地や建物を解説するテロップは一切入らない。観る人は映像とともに旅をしながら、「ここはどこだろう」「この建物は何だろう」と想像を膨らませる楽しさを味わえる。さらに、隈氏が現地で交わす会話を通して、建築物と土地とのつながりを大切にする姿勢を学び、建物そのものだけでなく、ヨーロッパの山間に暮らす人々、日本の大工や職人、そして南三陸の人々など、そこに生きる人々へも思いを馳せるようになる。

 15年間にわたって撮った膨大な映像の編集について、岡監督は「量が多かったので大変でしたが、隈建築のような『粒子的な』小さな映像の集まりにしようと決めたことで、光が見えてきました」と語る。隈建築の特徴である「粒子状のデザイン」に着想を得て、膨大な映像素材を細かな断片としてちりばめる手法を採用した。

 タイトル「粒子のダンス」には「粒子がダンスをしているような建築」という意味が込められているという。「隈先生が『建築の粒子には多様なリズムがあり、いろんなリズムで並んでいる』と話されていた。自分はそこにダンスを感じました」と明かす。さらに「もう一つ、『ダンス』という言葉には、市民と建築の関係性も表現されています」とも語る。映像では、建築の完成形だけでなく、日々、市民がどのように建築を使い、親しんでいるのかを記録。建築と人々の「ダンス」も映し出している。

「粒子のダンス(particle dance)」岡博大監督 Courtesy of VIFF

 音楽面では、藤本一馬氏に作曲を依頼し、その音楽にシーンを重ねながら編集を進めた。また、サウンドデザインを担当した勝本道哲氏は、岡監督が現地で録音した雨や風、せせらぎ、民族音楽などの生音を取り入れ、映像と音が一体となるよう仕上げている。

 映画は8月に日本で完成披露試写会を開催。その後、コペンハーゲンの建築ビエンナーレでワールドプレミアを迎え、バンクーバー国際映画祭で北米プレミアを果たした。岡監督は「完成を迎えはしましたが、これから皆さんに作品を届けていく段階。まだ終わっていないという気持ちですね」と話す。

 「松尾芭蕉が『奥の細道』で各地を巡り、その土地の空気を句に詠んだように、隈先生の建築も、土地ごとの文化や歴史、素材、職人技を融合させた“建築という俳句”だと思います。映画を通して、隈先生が詠んだ土地土地の句を旅するように楽しんでもらえたら嬉しいです」と期待する。

 15年の時を経て完成した本作。それは、建築と人、そして時間の記録が静かに響き合う、まさに“粒子のダンス”と言えるだろう。

バンクーバー国際映画祭開催中に来加、取材に応じてくださった岡博大監督 Photo:Osanpo News Canada!

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