観たよ!『プロジェクト・ヘイル・メアリー』レビュー|孤独な科学者が届ける希望の物語

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』(フィル・ロード&クリストファー・ミラー監督)

孤独な科学者が届ける希望の物語

Ryan Gosling stars as Ryland Grace in PROJECT HAIL MARY, from Amazon MGM Studios.
Photo credit: Jonathan Olley© 2025 Amazon Content Services LLC. All Rights Reserved.

 アンディ・ウィアーのベストセラー小説を原作とした映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー(Project Hail Mary)』。『オデッセイ(原題The Martian)』で知られるウィアーらしい緻密な科学描写と、人の心に寄り添うドラマがバランスよく描かれている物語は、全人類の命運を懸けた壮大なミッションを描きながら、コメディ要素も満載。観終わった後に心が温まり、明日への力が湧いてくる、SF好きでなくてもきっと楽しめる一本です。

 物語は、主人公ライランド・グレースが宇宙船の中で目を覚ますところから始まります。自分がなぜそこにいるのかも分からない状態から、少しずつ記憶を取り戻しながら人類の命運を背負ったミッションに向き合っていく展開で、観る側も主人公と同じ視点で状況を理解していくため、自然と物語に没入できる構成です。

極限状態なのに前向きさを失わない姿に励まされた

 本作で特に心に残るのは、「不可能に近い状況に直面しながらも立ち向かっていく主人公」の姿です。広い宇宙の中でたった一人という極限状態に置かれながらも、あきらめずに考え続けるグレースの姿は、とても人間らしく、静かな強さを感じさせてくれます。とにかく、前向きでポジティブ。大げさなヒーロー像ではなく、等身大の人物として描かれている点も共感しやすいポイントです。

孤独な人物を演じながらもコメディの軽快さが効いているライアン・ゴズリングの演技

 そんな主人公を演じるライアン・ゴズリング。シリアスな状況の中にも自然なユーモアを織り交ぜ、孤独な物語でありながらどこか温かみがあるのは、彼の柔らかな表現力とコメディセンスによるところが大きいでしょう。

 一方で、サンドラ・ヒュラーの演技は、感情を大きく表に出さない分、内面の強さや緊張感が静かに伝わってきて物語全体を引き締めている印象です。サンドラ・ヒュラーと言えば、昨年は「落下の解剖学」と「関心領域」の2本でその演技力が強い印象を残しました。まさかこんなに早く、しかもハリウッド映画で観れるとは驚きでしたが、今回もさすが印象に残る存在感を放っています。

Ryan Gosling stars as Ryland Grace and Sandra Hüller as Eva Stratt in PROJECT HAIL MARY, from Amazon MGM Studios.
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宇宙の孤独を溶かす「最高のバディ」の誕生

 そしてこの作品での一番の魅力は、極限状態の中でグレースが出会う相棒「ロッキー」と築く信頼関係。ネタバレを避けるために詳しく書くのは避けますが、二人が試行錯誤しながらお互いを理解していくプロセスは、知的好奇心を刺激すると同時にリスペクトとユーモアに溢れており、とても心温まるものでした。(もうロッキー最高です!)あと映画『未知との遭遇』を観たことのある方には「おおっ!」となるシーンもあるのでお楽しみに。

諦めない、というポジティブなメッセージ

 ハードSFとしてのリアリティを追求しながらも、本作の根底にあるのは徹底的にポジティブな人間賛歌です。どんなに絶望的なトラブルに見舞われても、「問題を一つずつ解決していくんだ」と諦めません。このシンプルな哲学が、複雑な科学的計算と組み合わさり、奇跡のような結果を生み出します。困難に直面したとき、知恵を絞り、手を動かすことの尊さを教えてくれました。

Ryan Gosling stars as Ryland Grace in PROJECT HAIL MARY, from Amazon MGM Studios.
Photo credit: Jonathan Olley
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「宇宙は広くて温かい」

 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は、壮大なSF作品でありながら、「考えること」や「誰かのために行動すること」の大切さをそっと教えてくれる映画です。「宇宙は広く、そして温かい」という希望も与えてくれます。きっと観終わった後は「Amaze! Amaze! Amaze!」と叫びたくなるはずです。

 もし可能であれば、IMAXで観てみてください。壮大な宇宙に引き込まれる感じが一層楽しめるかと思います。

観たよ!は映画好きライターたちによる連載コラムです。話題のハリウッド大作からインディー作品、配信限定の映画まで。「これは良かった!」という作品から「イマイチかも…」という作品まで。個人的な視点も交えながら、どんどんレビューしていきます。

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