Netflixで配信開始TIFF映画レビュー「Train Dreams」(Clint Bentley監督)
儚き人生の光をすくい上げるような物語

TRAIN DREAMS – (Pictured) Joel Edgerton as Robert Grainier. Cr: Netflix © 2025 Courtesy of TIFF
デニス・ジョンソン原作の同名小説を映画化した「トレイン・ドリームズ」を、トロント国際映画祭(TIFF)で鑑賞しました。サンダンス映画祭に参加した批評家の方々から薦められた作品でしたが、その期待を軽く超えるほど心を揺さぶられ、鑑賞後もしばらくのあいだ頭からこの映画のことが離れませんでした。静かに、しかし確かに胸の奥にズーンと突き刺さるような一本です。物語の深みはもちろん、ジョエル・エドガートンの抑制された静の演技や、自然の息づかいを感じさせる映像美も見事に調和している素晴らしい作品です。
追記:11月21日からNetflixでの配信が始まりました!
あらすじ: 舞台は20世紀初頭のアメリカ北西部。物語は、鉄道建設のために森林伐採に従事するロバート・グレイニアの人生を中心に進みます。壮大な自然の中、過酷な労働環境、そして急速に変わりゆく社会の波に翻弄されながらも、ロバートは愛する家族と幸せな暮らしを築いていきます。しかし、その平穏な暮らしを思いがけない悲劇が襲います。 物語は、数々の試練に向き合いながら生きるロバートの姿を通して「生きるとは何か」という問いを静かに投げかけます。また、名もなき労働者たちの忘れられた貢献やアメリカの拡大の陰に潜む暴力、大自然と人間との深いつながりも浮彫りにしています。
孤独と喪失が照らし出す、人生の儚さ
映画は、主人公ロバートの抱える孤独、ささやかな喜び、そして避けられない喪失を、丁寧に紡ぎ出していきます。寡黙で働き者、そして心根の優しいロバートの姿は、派手な演出がないからゆえ観る者の心を強く揺さぶります。
人との出会いや別れ、社会の移ろい、自然の厳しさ―ロバートが向き合うそれらの出来事は、人生の儚さを鮮やかに浮かび上がらせると同時に、「人は何のために生きるのか」という問いを静かに投げかけてきます。
特に印象的なのが、晩年のロバートが飛行機に乗るシーンです。眼下に広がる雄大な大地を見つめるうちに、彼は自然の大きな循環の中に自らの人生を重ね合わせ、自分の歩みが決して無意味ではなかったことをそっと受け入れていきます。孤独に満ちた歳月のなかにも確かな幸福があった――その気づきは、彼が真摯に生き続けた証であり、胸が締めつけられるほど美しい瞬間でした。

TRAIN DREAMS – (L-R) Felicity Jones as Gladys and Joel Edgerton as Robert Grainier. Cr: Netflix © 2025 Courtesy of TIFF
自然が映し出す人生の意味
美しい自然描写も、この映画の大きな魅力です。森や山々、季節の移ろいが織りなす風景は物語と呼応し、まるで自然そのものがロバートの人生を語る語り手であるかのように感じられます。
カメラは雄大な景色の前で佇む人間の小ささと、そこに宿る儚さを静かに映し取り、私たちが自然の一部として生きていることを改めて思い出させてくれます。その映像世界は、言葉以上に「生きるとは何か」を語っていました。
静けさの中に宿る力強さ
『Train Dreams』は決して派手な作品ではありません。むしろ、日常のささやかな瞬間や、心の奥に積み重なる記憶の重みを丁寧にすくい上げる 映画です。ジョエル・エドガートンの静謐な演技は驚くほど深い情感を宿し、人間味あふれる演技は痛いほど胸に沁み入り、鑑賞後も静かな余韻となって長く心に残ります。
孤独や喪失を抱えながらも、小さく光る幸福を見つけ、生きることの意味を思い返す――そんな体験をそっとこちらに手渡してくれる、静かでありながら力強い作品でした。

観たよ!は映画好きライターたちによる連載コラムです。話題のハリウッド大作からインディー作品、配信限定の映画まで。「これは良かった!」という作品から「イマイチかも…」という作品まで。個人的な視点も交えながら、どんどんレビューしていきます



