リッチモンド・アート・ギャラリーでSIDE COREが北米初個展開催
「SIDE CORE: under city」都市の地下空間を舞台にした映像インスタレーション ー6名のカナダ人アーティストによる「I digress」と同時開催

リッチモンド・アート・ギャラリーでSIDE COREが北米初個展開催 都市の地下空間を舞台にした映像インスタレーションを展示
バンクーバー郊外のリッチモンド市にあるRichmond Art Gallery で、4月18日から7月5日まで、「SIDE CORE: under city」と「I digress」の2展を開催している。同ギャラリーのディレクター、ショーン・デイシーさんのキュレーションによる「SIDE CORE: under city」は、東京を拠点とするアーティスト・コレクティブ SIDE CORE にとって北米初となる展覧会。本展では、現代美術、スケートカルチャー、都市インフラの境界を横断する作品群を紹介する。同時開催される「I digress」は、ゾーイ・チャンさん のキュレーションによるグループ展で、6名のカナダ人アーティストによる作品を通して、個人的経験と集合的歴史の交差を探る。
東京を拠点とするアーティスト・コレクティブ SIDE CORE による北米初個展「SIDE CORE: under city」
SIDE COREは、高須咲恵さん、松下徹さん、西広大志さんの3名のアーティストと映像ディレクターの播本和宜さんによって構成されるアーティスト・コレクティブ。都市インフラや公共空間への介入をテーマにした作品で知られ、ガードレールや道路工事用サインといった都市の構造物を再解釈しながら、現代美術、ストリートカルチャー、スケートボード文化を横断する活動を展開している。2024年には東京の Watari-um Museum of Contemporary Art で大規模個展を開催し、国際的な注目を集めた。

Richmond Art Gallery で北米で初の個展を開催している「SIDE CORE」の左から、播本和宜さん、西広大志さん、高須咲恵さん、松下徹さん
地下の都市空間をめぐる映像インスタレーション
本展の中心となるのは、2023年に制作された映像インスタレーション『rode work ver. under city』。Far East Skate Network とのコラボレーションにより制作された本作では、東京の地下空間――雨水貯留施設、使用されなくなった交通トンネル、メンテナンス通路など――をスケーターたちが滑走する様子が映し出される。
観客が地下へ侵入するような感覚を抱かせる、4つの映像チャンネルを用いて構成された展示室。17分間の映像は、撮影した映像をつなげ都市の地下をひとつながりの仮想空間として再編成したもので、地下に広がるもう一つの別世界への想像力をかきたてる。必要なインフラでありながら日常の意識にほとんど現れない空間が、スケートボードで疾走する映像を通して可視化されていく。
作品の背景には、2021年東京オリンピック以降の都市開発やジェントリフィケーションへの問題意識がある。SIDE COREの松下徹さんは、「スケートボードが公式競技となり選手たちが国民的英雄となる一方で、“都市の美化”を理由にストリートスケートへの規制が強化されました」と語る。「また、ストリートカルチャーは消費され商品化されつつあり、例えばグラフィティは今やアートオークションの定番となっています。ストリートの『野性味』を取り戻すことは難しい。だからこそ私たちのプロジェクトはそこに『別の可能性』を模索しています。そして地上では行動が制限されているため、地下に新たな表現の場を見出そうともしているのです」とも。
松下さんは、「東京の地下はすごく色々な空間があるのですが、自分の足で入れない場所を開拓して共有してみたかったんです。」と、都市の下にある知られざる暗きょを題材に選んだ理由も話す。
インスタレーションと合わせて、ギャラリー外部から見ることのできるモニターには24時間渋谷スクランブル交差点からのライブを流す。「映像には渋谷交差点のすぐ下の地下をスケートボードで通るシーンが出て来るので、同時に地上の交差点の様子も流したら面白いだろうな、と考えました。」
松下さんは「異なる価値観同士が出会った時に面白いものが生まれると感じていて、違うもの同士を組み合わせて作るのが作品の力になる。今回の場合は、地下とスケートボードなど」と話し、「日常の周囲に少し違う世界がある、そこを見つけて何が可能だろうか、などと想像するきっかけになれば」と、観る人に期待する。
キュレーターのデイシーさんは「本展では東京とリッチモンドという二つの都市の共通性にも焦点を当てています。両都市はいずれも埋立地の上に形成され、洪水や自然災害のリスクを抱えています。さらに、両都市ともオリンピックを経て都市開発やジェントリフィケーションが進んだという共通点もあります」と、太平洋を隔てながらも共有される地質条件や背景を通じて、遠く離れた場所同士を結ぶ「見えないつながり」を提示する。「東京という大都市の地下をアートの題材にしているところ、映像を観た時に感じたSF的な雰囲気にも大変興味をそそられました」とその魅力も。

Richmond Art Gallery の外から見ることができる、渋谷スクランブル交差点のライブ映像
「I digress」ー様々なアーカイブから表現するアーティストたちの視点
同時開催される「I digress」は、ゾーイ・チャンさん のキュレーションによるグループ展。シムランプリート・アナンドさん、ジョアン・バルカーンさん、オーガスト・クリントバーグさん、アン・コジマさん、リンジー・マッキンタイアさん、ゴンサロ・レイエス・ロドリゲスさんの6名が参加し、「アーカイブ」をテーマとした、写真、16mmフィルム、映像、版画、刺繍、コラージュなどを展示。祖国、個人、家族などの記憶や歴史のアーカイブを、様々なミディアムを通して表現する。展示物一点一点の中に、深く広がるストーリーが感じられる作品群が並ぶ。
キュレーターのチャンさんは「アーカイブと自伝的要素に関わるアーティストに関心がありました。本展の多くのアーティストは非常に個人的なテーマを掘り下げつつ、それぞれのコミュニティや、より広い社会文化的・政治的文脈に関わる問題にも取り組んでいます。作品には、階級的な恥とディアスポラ経験の交差、保守的なアルバータ州におけるクィアの成長過程、カナダにおけるパンジャビ系留学生や移民労働者の搾取、さらにはイヌイットの家族に世代を超えて影響を及ぼす移住のトラウマなど、さまざまなテーマが現れています。」と説明する。
さらに館内アートラウンジでは、「Collection Close-up」と題した展示も開催。マリア・フィリピナ・パラッドさん のキュレーションにより、常設コレクションから アラン・ウッドさん のシルクスクリーン作品《Beach Walk》(1992)および関連資料が紹介される。
「SIDE CORE: under city」と「I digress」は、2026 Capture Photography Festival の Selected Exhibition Program の一環として開催。
「SIDE CORE: under city」「I digress」
- 会期:2026年4月18日〜7月5日
- 会場:Richmond Art Gallery (7700 Minoru Gate, Richmond)
- ギャラリーの開館時間は公式サイトをご覧ください
- 入場料:無料
- 6月7日には日本語ガイドによるツアーを実施予定(2:00 pm)
- キュレーター:
- 「SIDE CORE: under city marks」:Shaun Dacey
- 「I digress」:Zoë Chan
- 参加アーティスト:
- SIDE CORE
- Simranpreet Anand
- Joanne Balkan
- August Klintberg
- Anne Kojima
- Lindsay McIntyre
- Gonzalo Reyes Rodriguez



