グレッグ・ジラード初の大規模回顧展、ノースバンクーバーで開催  54年にわたる都市と人々の記録を一望

グレッグ・ジラード初の大規模回顧展、ノースバンクーバーで開催
香港、日本、上海などで撮影された160点超を展示

 ノースバンクーバーのポリゴン・ギャラリー(The Polygon Gallery)で7月10日から、カナダ人写真家グレッグ・ジラードさんの初となる大規模回顧展「Greg Girard」が始まった。

 本展では、1972年から2026年までの54年間に撮影された160点を超える作品を展示。代表作に加え、これまで写真集には収録されなかった未公開カットや、近年故郷バンクーバー周辺で撮影した新作も公開される。会期に合わせ、新写真集『Greg Girard – Photographs 1972–2026』も刊行される。

Greg Girard, Kowloon Walled City, from SE Corner, Hong Kong, 1987. Image courtesy of the artist and Monte Clark Gallery, Vancouver.

 1970〜80年代の東京を撮影した作品でもよく知られるグレッグ・ジラードさん。1980年代からアジア各地を拠点に活動し、とりわけ香港、上海、東京、沖縄などの都市を舞台に、夜の街に漂う空気や都市の変容を詩的な視点で記録してきた。ネオンに照らされた路地、深夜の街角、開発によって消えゆく建物や人々の暮らしを捉えた作品は、多くの写真家にも影響を与えている。

 なかでも、取り壊し前の九龍城砦を撮影した『City of Darkness: Life in Kowloon Walled City』(1993年)は、現在では歴史的資料としても高く評価される一冊。また、急速な再開発が進む上海を記録した『Phantom Shanghai』(2007年)は、SF作家ウィリアム・ギブスンが序文を寄せ、『The Independent』紙が「史上最高の写真集10冊」の一つに選出したことでも知られている。

 今回の展覧会では、こうした代表作だけでなく、写真家として歩み始めた1970年代の初期作品から現在までを年代順に紹介する点が大きな特徴となる。10代の頃、高校教師から与えられた課題をきっかけに、バンクーバーのダウンタウン・イーストサイドのホテルに滞在しながら撮影したモノクロ写真も展示され、世界的な写真家へと成長する以前のまなざしを知ることもできる。 また、BBCや『Asiaweek』、『Time』誌などの報道現場で活動していた時代の資料や、雑誌には掲載されなかった写真も展示される。

Greg Girard 展の、左から、The Polygon GalleryキュレーターのElliott Ramseyさん、Greg Girardさん、The Polygon GalleryディレクターのReid Shierさん。Photo:Osanpo News Canada!

 都市風景の写真家というイメージが強いジラードさんだが、本展では人物写真にも焦点が当てられている。共同キュレーターのエリオット・ラムジーさんは、「都市を撮る写真家として知られる一方で、人々を撮る才能もまた卓越している。街をその住民を通して描き出す力こそ、ジラードさんの魅力の一つ」と話す。また、展示されているポートレイトを示し、「表情を見れば、ジラードさんが彼らを単なる被写体として見ていたのではなく、時間をかけて信頼を築いた相手であることがわかるでしょう」とも。

 展示には、2017年ごろから6年かけて日本各地にある「スナックさくら」を撮影したシリーズからの写真も展示されており、明るいネオンと対照的な夜の街の静けさや孤独感も伝える。ジラードさんは「日本に滞在中、『スナックさくら』がいろいろな町にある事に気づいた。」と興味を持ったきっかけを話す。「日本には数年滞在しながら様々な場所を訪れたのだが、都会だけでなく過疎化の進んだ小さな町にもぽつんと『スナックさくら』があったりし、ママさんがいて常連が訪ねてくる‘日本のスナック文化’というものに興味深いものを感じた」と写真を撮り続けた理由を話した。

 ノースバンクーバーのThe Polygon Galleryで現在、Greg Girardさんの写真展が開催されている。Photo:Osanpo News Canada!

 2011年にバンクーバーへ戻ったジラードさんは、再び故郷の風景を撮影し続けている。近年はInstagramでも24万人以上のフォロワーを持ち、若い世代の写真家にとっても大きな存在となっている。 

 都市が変わり続ける瞬間を半世紀以上にわたって見つめてきたグレッグ・ジラードさん。派手な演出のない写真からは、それぞれの場所で生きる人々への温かいまなざしが感じられる。その歩みを一望できる本展は、アジアの都市文化やストリートフォトグラフィーに関心のある人にとっても見逃せない機会となりそうだ。

  • 会期:2026年7月10日(金)〜10月25日(日)
  • 会場:The Polygon Gallery(101 Carrie Cates Court, North Vancouver)
  • 開館時間:水曜 10am–5pm; 木曜 10am–9pm; 金曜~日曜 10am–5pm 月・火曜は休館
  • 展示作品:約160点(1972〜2026年)
  • 同時刊行:『Greg Girard – Photographs 1972–2026』
  • 入場料:任意の寄付

詳細やスケジュールは、The Polygon Gallery公式サイトでご確認ください。

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