バンクーバーでダンス公演「Fall(se) Circ(us)」振付には空手の影響も

バンクーバーで現代ダンスの挑戦—Little Room Productionsが「Fall(se) Circ(us)」上演

空手×グラトリ×現代ダンス、LRPのアイザック・エンクイストさんが描く身体の物語

Little Room Productions Fall(se) Circ(us): Photo by Lula-Belle Jedynak

 バンクーバー発のダンスカンパニーLittle Room Productions(LRP)が3月21日、初のフルレングス作品『Fall(se) Circ(us)』を発表する。イエールタウンのラウンドハウス・コミュニティ・センターで初演を迎える本作は、「動きと休息」という普遍的なテーマに鋭く切り込み、観客とパフォーマーの関係性そのものを揺さぶる意欲作だ。New Works The Roundhouse Community Centreとの共催。

 振付を手がけるのは、共同ディレクターのアイザック・エンクイストさん。空手やスノーボードといった身体性の強いバックグラウンドを持つ彼のスタイルは、現代ダンスの枠を超えたダイナミズムが特徴だ。本作では、サーカスのように重力に逆らう身体表現から始まり、やがて即興的な動きへと移行。パフォーマンスの「見せる」側面を解体し、身体を通じた人間の脆さや動きのリアリティを浮かび上がらせていく。

 「子どもの頃からティーンまで松濤館空手を習っていた経験は、その後ダンスを始めてからのバランスや体幹、動きにとても役に立っていると思います」と話すアイザックさん。「ただ、空手とダンスでは体の使い方に大きな違いもあります。例えばバレエは体を床から引き上げるのに対し、空手は重心を低く保ちます。また、バレエでは体を大きく外に開き、不安定かで脆弱な状態を作りますが、空手は無駄の無い動きで防御し、力を整えます」とその違いを説明。「両方の違いを知るからこそ、それらをダンスに取り入れる方法を常に探しているのです」とも語る。

Little Room Productions Issak-Enquist_Photo by Lula-Belle Jedynak

 さらにスノーボードの「グラトリ(グラウンドトリック)」テクニックからも影響を受けているという。  「両足が一つの板に固定された状態で、回転したり重心をずらしたりする動きは、両足が自由に異なる方向へ動くダンスとはまったっく異なります」と説明。 「腰から脚へと回転の力をうまく伝え、脚をひとまとまりとして使えれば、大きなパワーを生み出せます。その動きをダンスに生かせればと考えているのです」とグラトリの動きを取り入れたダンスの可能性を語る。

 アイザックさんは、「この作品は、ダンスを通じてコミュニティを築きたいという思いから生まれました。さまざまな背景を持つ人々が、身体的な動きの体験を共有できる場をつくりたいのです」と話す。「世界各国の多くのコミュニティーには、人々が一緒に踊る文化があります。しかし、カナダでは北米文化の中で育つ世代が増えるにつれ、出身地域の伝統や文化が少しずつ薄れてきているのも事実です。その影響もあり、(家族が北ヨーロッパ出身の)私自身を含め、コミュニティーで踊る経験を持たない人が増えていることを、とても残念に感じています」と意義を語る。「なのでこの『サーカス』が単なるショーではなく、共にダンスを踊り体を動かす場になれば」と期待を寄せる。

Little Room Productions Fall(se) Circ(us) Photo by Lula-Belle Jedynak

 出演は、地元および海外で活躍する7人のダンサー。音楽はアイザック・エンクイストさんとタイラー・レイトン=オルソンさんによるベース主導のリズミカルなスコアを採用し、身体の躍動と密接に呼応する。さらに照明デザインは、受賞歴を持つジョノ・キムさんが担当し、舞台空間に奥行きと緊張感を与える。

 Little Room Productionsにとって本作は、2024年の『Creature Comfort』に続く第2作目。カンパニーとしての新たなフェーズを示す重要な節目となる公演だ。身体表現の可能性とコミュニティの在り方を問い直す『Fall(se) Circ(us)』は、現代の観客に新たな体験を提示してくれるに違いない。

Little Room Productions(littleroom.ca)について
バンクーバーに新しく登場した団体、Little Room Productionsは、エオウィン・エンクイストさんとアイザック・エンクイストさんによる共同制作を展開するためのプラットフォームです。ダンス、演劇、映画、実験音楽など幅広い分野で芸術的プロセスを共有しながら活動しています。二人は、豊かな芸術的実践を育み、大胆な新作パフォーマンス作品を創造することに注力しています。

開催日時:2026年3月21日(土)19:30開演
会場:ラウンドハウス・コミュニティ・センター(バンクーバー)

チケット:$25.00

チケットおよび詳細は、Little Room Productions公式サイト、及びNew Works公式サイトで確認できる。

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