バンクーバー国際映画祭で『Our Mr. Matsura』上映-Beth Harrington 監督にインタビュー

『Our Mr. Matsura』フランク・マツラが残した写真の一枚:Courtesy of VIFF

 バンクーバー国際映画祭で10月4日と5日に、べス・ハリントン(Beth Harringgton)監督のドキュメンタリー映画『Our Mr. Matsura』を上映する。

 作品は、20世紀初頭のアメリカ北西部で活躍した日本人写真家、フランク・マツラ(松浦栄)の生涯に迫るドキュメンタリー。
 先住民族や開拓者たちの日常をユーモアと親密さ溢れる視点で切り取った彼の作品群を紹介するとともに、地域社会から「フランク(Frank )」と呼ばれ深く愛されていた、彼のフレンドリーな人間性と知られざる足跡を映し出す。
 映像は、貴重な写真や歴史的資料、日米の関係者の証言を通して、130年前にワシントン州の小さな町で暮らしていた一人の日系移民の生涯と、彼の写真がコミュニティにもたらしたものを追う。

映画制作のきっかけ

 ハリントン監督がマツラの写真に出会ったのは、25年程前。北米先住民のポートレイトなどで知られるエドワード・カーティスの写真展にマツウラの作品も数点展示されていたのだ。「彼の写真はどれも、被写体と撮った人間の関係がすごく良いと伝わってくるもので、一体写真家は誰なんだろうと、すごく惹かれたのを憶えています」と第一印象を振り返る。「撮影者の名前を見てみたら『Matsura』と日本人の名前があり、さらに驚きました。ワシントン州の田舎であるオカノガンに、それもあの時代に日本人の写真家?と益々興味をひかれたのです」とドキュメンタリー制作のきっかけを語る。

 マツラについては、日本で書籍が出版されたほか、てれび番組でも取り上げられたことがあるものの、その人生には、いまだ多くの空白が残されている。日本を出る前の時代についてはもちろん、なぜ写真家になったのか、なぜオカノガンにたどり着いたのか―「調べてもわからなかったことがたくさんあります」とハリントン監督は語る。しかし、オカノガン地域を訪れると、1世紀が経った今もなお、マツラの写真が町の大切な遺産として受け継がれている。マツラが撮影した写真に写る曽祖父や祖父を愛おしそうに指さしながら、かつて家族から聞いたマツラの思い出を語る人もいる。

『Our Mr. Matsura』フランク・マツラが残した写真の一枚:Courtesy of Beth Harrington

死後100年以上が過ぎても、マツラを忘れずにいるコミュニティーの人々

 ハリントン監督は、「こんなにも長い間、人々が一人の日本人を覚えている、その事実にとても心を打たれたのです。疑問は多く残されていたので、彼のバイオグラフィーを作ることはできない。しかし、死後113年も経っているのに、彼のことを忘れずにいるコミュニティーや人々のことは語ることができる、そう思いました」

 約4000点ほど残されている、マツラの写真にも多くの驚きがあった。町や先住民の人々とその暮らし、風景、建設現場、そしてスタジオで撮られたポートレートの数々。そこには、そこには地域の記録があった。そして今で言うフォトブースの様な笑顔とユーモアあふれる写真も多くあり、多様な人たちが笑顔で一緒に写真に納まっているものも少なくない。「彼と彼の写真が、人々をつなぎ合わせていたのかも知れませんね」

『Our Mr. Matsura』フランク・マツラが残した写真:Courtesy of VIFF

 コミュニティーとは何か

 ハリントン監督は、この作品を観る人に「このような時代だからこそ、コミュニティーとは何か、その場所との結びつきとは、ということの可能性を感じてもらえれば」と期待する。「お互いにわかり合い交流することの可能性、コミュニティを築くということの可能性、をマツラがとても上手に見せてくれました。私たちにもできるのでは」とも。 

フランク・マツラ(松浦栄):
1901年に侍の家系に生まれ、幼くして両親を亡くしたマツラは、明治初期のトウキョウで育った。青年期にシアトルへ移住し、その後ワシントン州オカノガン地域に。そこで写真家として、先住民、開拓農民、カウボーイ、鉱山労働者、をはじめ地域の人々の写真を撮り続けた。1913年に結核で亡くなった彼の葬儀は、町をあげての大規模なもので、多くの人が参列したと伝えられている。マツラが残した写真は4,000点以上。現在は多くが、オカノガン群歴史協会、ワシントン州立大学図書館などに保管されている。

べス・ハリントン監督/Courtesy of VIFF

べス・ハリントン監督:
ベス・ハリントンは、アメリカの歴史や音楽文化をテーマにした作品で高く評価されるエミー賞受賞・グラミー賞ノミネート監督。代表作は、カントリー音楽の歴史を描いた『The Winding Stream』、女性ロカビリー・ミュージシャンを追った『Welcome to the Club』など。公共放送(PBS等)の番組制作にも長年貢献し、30年以上にわたり独立系ドキュメンタリー映画界を牽引している。

10月4日 5:45 pm(会場 International Village 10)

10月5日 10:20 am (会場International Village 10)

両日とも、ベス・ハリントン監督が上映後登壇しQ&Aを実施する。

チケットの購入、詳細はVIFF公式サイト『Our Mr. Matsura』をご覧ください。

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