「ポジティブでいなければ」という社会の圧力をダンスで描く
ーCompagnie Catherine Gaudetが、最新作『ODE』をバンクーバーで上演

DanceHouse, Catherine Gaudet’s ODE. Photo by Julie Artacho

「ポジティブでいなければ」に潜む違和感

 ケベックを拠点に活動する振付家Catherine Gaudet(カトリーヌ・ゴデ)率いるCompagnie Catherine Gaudetが、最新作『ODE』をバンクーバーで上演する。DanceHouseの2026/27シーズン開幕を飾る作品として、10月23日(金)・24日(土)、Vancouver Playhouseの舞台に登場する。

 『ODE』は、ポップ/ロック・コンサートと儀式的なセレモニーを掛け合わせたような、約1時間のコンテンポラリーダンス作品だ。

 作品の出発点となるのは、一見するとシンプルでポジティブな「愛」のイメージ。11人のパフォーマーが一つの集団となり、リズムに合わせて「love」と唱えながら、精密に統制された動きを繰り返していく。横方向へのステップ、滑らかな腕の動き、頭上へ伸ばされる手、揺れる身体――その振付には、エアロビクスのような機械的な正確さと、儀式的な行進を思わせるスピリチュアルな雰囲気が共存する。

 しかし、完璧な一体感を見せていた集団は、次第にほころび始める。声はかすれ、身体は疲弊し、揃っていた動きも崩れていく。その背後にあるのは、「いつも前向きでいなければならない」という現代社会のプレッシャーだ。

 セラピー用語、自助啓発書、ニューエイジ系のトークなど、私たちの日常に浸透する「ポジティブであること」の言葉を取り込みながら、『ODE』は、資本主義社会における幸福への強迫的な欲望と、集団に同調することの危うさを浮かび上がらせる。

DanceHouse, Catherine Gaudet’s ODE. Photo by Mathieu-Doyon

 「どこかに属したい」という願いは、人間にとって根源的なものだ。一方で、集団に受け入れられるために自分自身を差し出してしまうとき、そこにはどのような代償が生まれるのか。『ODE』は、その緊張関係を身体表現によって問いかける。

 DanceHouseの芸術・エグゼクティブ・ディレクター、ジム・スミスさんは、本作について「ダンス作品とロック・コンサートと儀式のあいだのどこかへと連れていかれたような感覚」だったと語る。そして、公演後も心に残るのは、「どこかに属したいという欲望と、集団に自分自身を明け渡すことの代償とのあいだにある緊張感」だという。

 Gaudetは、精神、アイデンティティ、身体を主要なテーマとして、独自の振付言語を築いてきた振付家。2022年にはGrand Prix de la danse de Montréal(モントリオール・ダンス大賞)を受賞している。微細な動きとリズミカルな身体表現を駆使し、普段は隠している感情や感覚を鋭く可視化する作品で知られる。

DanceHouse, Catherine Gaudet’s ODE. Photo by Mathieu-Doyon

 『ODE』は2024年、モントリオールのFestival TransAmériques(FTA)で初演され、完売公演となった。2026年10月にはカルガリーを経てバンクーバーへ。西カナダでの公演を通して、Gaudetが描く「幸福」「同調」「集団」「自己」の複雑な関係が観客に投げかけられる。

「ポジティブであること」がいつの間にか義務になってはいないか。集団に馴染むために、自分自身を抑え込んでいないか。

 華やかでエネルギッシュなステージの奥に潜む、そんな問いと向き合う作品『ODE』。コンサートのような高揚感と、儀式のような緊張感が交錯する舞台は、コンテンポラリーダンスに馴染みのない人にも強い印象を残しそうだ。

Compagnie Catherine Gaudet『ODE』

  • 日時: 2026年10月23日(金)・24日(土)8:00 pm 開演
  • 会場: Vancouver Playhouse(600 Hamilton St. Vancouver )
  • チケット:$45~
  • 上演時間: 約60分
  • 開演前トーク: 両日7:15 pm〜
  • ポストショー・レセプション: 10月23日(金)公演終了後、Salonにて
  • 主催・上演: DanceHouse

詳細とチケットの購入は、DanceHouse公式サイトまで

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